目利きと仕入れ

おいしいお米とはどんなお米なのでしょうか?

外観で言えば、ツヤ、白さ、香りが良いことです。実際に口に入れると、お米に程良くまとわりついている水分、口の中に入れた瞬間に溶けて行くような食感、お米を噛むと弾力が出てくる粘り、すっと溶けて行くような喉越し。こういった部分を瞬間的に味わえることです。

逆に、お米のおいしさを感じさせない要因は、口に入れた瞬間に粒にまとわりつくざらつき感や、のどにひっつくようなぱさぱさ感です。これは、お米そのものの優劣の部分もありますが、それ以上に実はお米の精米方法で大きく変わってくるのです。

本当にお米の本来のおいしさを知ると、ごはんを食べたいという心からの欲望がわきあがってくるものですが、外食でそれが味わえず、売っているお米でも味わえなくなっています。それは、銘柄と産地でしかお米を判断できない選択肢しか消費者に提供されていないからです。そして、いま食べているお米が「ごはんの味」だと思われてしまっているのです。

魚沼産コシヒカリが一番おいしい
という人がたくさんいますが、本当ですか?

本当とも違うとも言えます。全国どこの場所でも、おいしい産地は必ずあります。そのなかで、新潟県の魚沼産は、地理的環境としても気候風土としてもおいしいお米ができやすい土地と言えます。とは言え、魚沼でつくった農家さんのお米がすべておいしいというわけではありません。農家さんによって、作り方も違えば、条件も土も違います。

ところが、銘柄や産地を前に出すような従来の売り方は、1つの産地が全部おいしいお米としてくくられてしまっているのです。もちろんおいしいお米がとれる地域はあるでしょう。しかし、お米の出来は、年によっても変わります。ある限定された産地でなく、全国津々浦々、おいしい地域もあれば、おいしいお米をつくる農家さんもいるのです。市町村合併によって魚沼市が拡大しましたが、昨年まで違う産地名だったお米が、今年から魚沼産になったら急においしくなるわけがないですよね。

「新潟県産コシヒカリが一番おいしいのですよね?」とか「どこの産地のお米がおいしいのですか?」といった質問をよく受けますが、どこの産地のお米でもおいしいお米ができる可能性はあります。しかし、お米の扱い方を間違えれば、おいしいお米もおいしくなくなってしまうのです。扱い方というのは、水加減とか炊き方の問題だと思われがちです。たしかに、そうした要因もありますが、お米の目利きと精米が明暗を分けるということを知っていただきたいと思います。精米については後ほど説明します。

このお米がおいしいと選ぶ基準は?

先ほど説明した、外観や、口に入れてからの食感などで相対的に味をみます。多くの人たちはお米を単品で味わうものとして選ぶと思いますが、私の場合は、このお米は単品で扱うべきか、あるいはブレンドに適しているお米か、そこを含めて「おいしいお米」を総合的に判断しています。

人の好みは千差万別ですから、お米との相性も人それぞれです。今の時代は、粘りの強いお米が「おいしいお米」という指標にとらわれすぎているようにも思いますが、たとえば硬めのお米が好きな人もいます。好みに応じてお米を選べる世の中になればいいなと願っています。

「お米の香り」と「お米の風味」は
どう違うのですか?

「甘さ」は、ごはんを口に含んだときに単純に感じられます。甘さにもいろいろな幅があります。同じ砂糖でさえ、グラニュー糖と黒糖の甘さは違いますよね。お米の甘さは、じわりとほのかに感じられる優しい甘さです。

「旨み」は、甘みも含めてごはんを噛むことによって広がっていく総括的なおいしさです。だから、「うまい」という言葉は総括的な言葉なのです。「うまい」の反対は「まずい」。お米の味をみるときは、炊飯器を開けた瞬間にわかる「白さ」「ツヤ」「香り」と、口に入れてわかる「粘り」「甘み」「食感」「喉越し」の7項目をチェックするほかに、そのお米が自分にとって「うまい」と感じるか、「まずい」と感じるかというところも大事にしています。

喉越しとはどんな感覚ですか?

ごはんを口に含んだときに、1回噛むと口の中で溶けていくような感覚です。魚で言うならば、大トロの食感でしょうか。大トロの場合は脂ですが、お米も同じように口の中に入れてすっと溶けて行く感覚に、私は「おいしい」という表現を使っています。逆に、おいしくないお米は口の中に入れても、なかなかのどを通っていきません。受動的に飲み込むのではなく、故意に飲み込まざるを得ないお米は「おいしくない」と感じます。

お米はどうやって仕入れているのですか?

私が毎年、全国各地の産地を回っています。そして、各産地から「今年収穫したお米の中では一番」と思うお米を送ってもらい、食味をチェックします。お米の味わいは毎年違いますから、その年の気候を考えながら味をチェックして、仕入れを決めています。私たちのお米選びは、産地を固定しないことが強みです。銘柄や産地には、とらわれません。同じ銘柄や産地であっても毎年味をチェックしています。「今年のお米はおいしくないけど、農家さんとの関係のために注文する」というようなことはしません。おいしさを基準に取引しています。

一方で、例年に比べて味が落ちる場合でも、ほかのお米とブレンドすることで例年以上のお米の味になる場合もあります。食べ続けているからこそ、昨年に比べてどうか、2年前に比べてどうか、あのお米との組み合わせはどうかなど、お米の味のデータベースが蓄積されているのです。

新米はおいしいって本当ですか?

本当です。お米は1年に1回しか獲れません。収穫直後が一番新鮮で、あとは劣化していきます。とは言え、年間通しておいしいお米をお届けし続けることが、プロの仕事。その手法の1つが、先ほども挙げた「ブレンド米」です。

お米への
こだわり